ピーナッツバタークッキー


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 青司から連絡が入ったのは、30分程前。待ち合わせに遅れるという。
 先に入店していたあたしは、2杯目のビールを頼もうとしていたところだった。

 事前に場所を教えてもらっていたし、割と分かりやすい場所だったからひとりでも来ることができた。おひとり様のあたし以外は全部カップル。なにこれ。
 口を尖らせていると、人が店に入ってくる気配がした。

「ごめん。お待たせしました」

 少し息を切らして現れた青司は、Tシャツにデニムといった出で立ち。

「先に飲んじゃった」

「ああ、良いんじゃない」

 少しだけ投げやりに言って、青司はビールをオーダーした。

 予備校で、あんなことがあったから……なんだか緊張する。そのままスルーしてくれると助かる。

 カウンター席と、4人テーブルが3つある小さな店は、創作イタリアンが美味しい店だった。青司がライヴの打ち上げで使ったとか。こんな洒落た店で打ち上げするなんて、バンド仲間もなかなかセンスが良い。

「ミーティング長引いて」

 荷物をどさっと隣の椅子に置く。

「なんの?」

「バンドの。今週末、ちょっと大きなイベントだから」

 またバンドの話か……ちゃんと授業に出て欲しいものだわ。勉強もそれくらい熱心だったら良いのに。

「ご両親、心配するんじゃない? 授業にはちゃんと……」

「かんけーない」

 あたしの言葉を遮るように言って、出てきたビールをあおった。