「ドレッシングも持ってきてー」
「……」
「おい、華」
……ドレッシング? 自分で持って行ってよ。
小さな紙袋を開けると、ビニールに入ったクッキー。その上にメッセージカードが見えた。「先日はありがとうございました。また会いたいです。サヤカ」と斜めった字がへばり付いている。
「……あ、うん。分かった」
源也はこの袋を開けていなかったから、中にカードが入っていることを知らないんだろう。サヤカって誰。誰。先日ってなに。会社で貰ったと言っていた。後輩か、同僚か。
「早く座ったら。腹減ったんだけど」
少しイライラした様子の源也が、こっちを向いている。あたしは紙袋の口を握り潰して、皿の上に置いた。ドレッシングを手に取る。
「冷めちゃうから食べよう」
少しは、気付いていたのかもしれない。あたしは、心のどこかで分かっていたのかもしれない。
箸を動かす源也の手を見ていた。空腹はどこかへ行ってしまった。
「死ねばいいのに」
ふいに、青司の声が頭に響いた。死ねばいいのに。ああ、あたしは別にそうは思っていない。ただ、不安だったものが確実なものに変わって、そして、悲しいだけ。泣きたいとか罵声を浴びせたいとか、そういうことじゃ満たされないもの。
気付いていたのかもしれない。分かっていたのかもしれない。源也には、他に女が居る。
こういう時って、みんなどうしているんだろう。責め立てる? 泣くの? 包丁持ち出すの? どうやって対処してるわけ?
テレビで見たり、友達の話を聞いたり、本で読んだりするけど自分の身に降りかかるとは思っていない。みんなきっとそうだ。だから、実際起こるとどうしたら良いのか分からない。頭の芯が冷えている。
静かに、源也の機嫌を損ねないように箸を動かし、咀嚼し、砂の味がする煮物やサラダを口の中に入れていた。美味しくない。吐き出したい。
「……」
「おい、華」
……ドレッシング? 自分で持って行ってよ。
小さな紙袋を開けると、ビニールに入ったクッキー。その上にメッセージカードが見えた。「先日はありがとうございました。また会いたいです。サヤカ」と斜めった字がへばり付いている。
「……あ、うん。分かった」
源也はこの袋を開けていなかったから、中にカードが入っていることを知らないんだろう。サヤカって誰。誰。先日ってなに。会社で貰ったと言っていた。後輩か、同僚か。
「早く座ったら。腹減ったんだけど」
少しイライラした様子の源也が、こっちを向いている。あたしは紙袋の口を握り潰して、皿の上に置いた。ドレッシングを手に取る。
「冷めちゃうから食べよう」
少しは、気付いていたのかもしれない。あたしは、心のどこかで分かっていたのかもしれない。
箸を動かす源也の手を見ていた。空腹はどこかへ行ってしまった。
「死ねばいいのに」
ふいに、青司の声が頭に響いた。死ねばいいのに。ああ、あたしは別にそうは思っていない。ただ、不安だったものが確実なものに変わって、そして、悲しいだけ。泣きたいとか罵声を浴びせたいとか、そういうことじゃ満たされないもの。
気付いていたのかもしれない。分かっていたのかもしれない。源也には、他に女が居る。
こういう時って、みんなどうしているんだろう。責め立てる? 泣くの? 包丁持ち出すの? どうやって対処してるわけ?
テレビで見たり、友達の話を聞いたり、本で読んだりするけど自分の身に降りかかるとは思っていない。みんなきっとそうだ。だから、実際起こるとどうしたら良いのか分からない。頭の芯が冷えている。
静かに、源也の機嫌を損ねないように箸を動かし、咀嚼し、砂の味がする煮物やサラダを口の中に入れていた。美味しくない。吐き出したい。



