ハイカロリーラヴァーズ

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 玄関ドアが開く音。そして足音。ああ、帰ってきた。あたしはテーブルを拭いていた手を止めて、足音の主がやってくる方向を見る。顔色を見るために。

「おかえり」

「ただいま……」

 夕食の準備が終わった頃、疲れた顔をして源也が帰宅した。

 食事はできているし、洗濯物も溜まっていない。別に不機嫌の種は無いはずだ。仕事でなにかがあって、機嫌が悪くなければの話だけど。

「来週、出張だよ。1泊で東京に行ってくる」

「え……そうなの。急だね」

 タオルくらいは出しておいてあげようか。自分で準備ができる人だから。これまでも、年に1度くらいの確立で出張が入ってくる。

 ワイシャツからネクタイを引き抜いて、ソファにかけている。あたしはそれを取り、隣の部屋に行ってハンガーを取ってきた。

「あ、これ」

「?」

 源也が鞄から取り出した小さな紙袋。それを受け取る。

「お菓子。会社の近くの店が美味しいって女子社員達が言ってて」

 お菓子……こんなの買って来てくれたの、いつぶりだろう。源也は甘いものが苦手だ。だから自分が食べる為に買って来たんじゃないってこと。……あたしに、買って来てくれたんだ。

「あ、クッキーだ」

「なんか、紅茶のクッキーだって聞いた」

「買って来てくれたの? 食後のデザートに食べようっと」

「俺はいらないよ」

 こういうお菓子をあまり食べないのは、分かってる。源也、今日は機嫌が良いのかな。お土産を買ってくるなんて。あたしの心はほこほこと温かくなった。

「えへへ、美味しそ……」

 食事のあと、すぐ食べられるように、お皿に出しておこうと思った。ああでも、湿気るかな? テープでとめてある袋を開ける。