ハイカロリーラヴァーズ

 廊下は静かだ。もうなんかこの状況で誰にも会いたくないし見られたくない。暑くてかいてるんだか冷や汗なんだか分からないものが額に浮かぶ。

 早くこの場所を離れたくて、回れ右をした時だった。

「池田さん?」

「うわぁ!」

 目の前に、人。ぶつかるところだった。

「ま、松河先生……」

 医学部コースのクラス担任だ。え、見てないよね。見えるわけないか。青司は保健室だし、いや、中に入ればひとりしか居ないけれど、えっと。

「どうしました? 真っ赤な顔して」

「あ、いえ。なんでも……」

 汗ばむ額に手を当てた。走ったせいだし、青司のせい。恥ずかしいから早くこの熱、引いて欲しい。
 手で顔を仰いで愛想笑いをしていると、松河先生が首を傾げている。

「保健室、どうかしましたか?」

「えっあっ、大丈夫です。生徒が体調不良で寝ていたんですが、部屋が暑かったもので……」

「ああ、じゃあここで話してたら邪魔ですね。早く良くなると良いけど」

「……はい」

 なんて返事をしたものの、あそこで寝ているのは松河先生、あなたのクラスの生徒です……。

「あ、池田さん。あとでクラス通信掲示しといていただけますか。データ流しておくので」

「は、はい。分かりました」

 返事をすると、あたしは逃げるようにその場から離れた。

 あのままたとえ松河先生が保健室の様子を見たとしても、なにもおかしなことは無いはずだ。生徒が寝ているだけなんだから。
 
 急いで戻って、リエちゃんとスイーツ食べよう。コンビニのだけど。