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呼吸を整えてから、すりガラスがはめ込まれたアイボリーのドアをノックする。ベッドはひとつじゃないから、他に誰かが休んでいるかもしれない。静かにしなくちゃ。
「失礼します……」
日当たりの良い保健室は、直射日光が差し込んで、とても暑く感じる。空調は利いているはずだ。レースのカーテンで遮られた日差しは、部屋の中をもわりと包んでいた。
大急ぎで倉庫になっている部屋に段ボールを運んで中身を補充し、次にダッシュでコンビニへ。リエちゃん用のコンビニスイーツと青司用の冷たいお茶を買い、再び予備校へ戻る。コンビニが隣のビルにあって良かった。生徒が見たら「あの事務員、何を走り回っているんだろう」と思うに違いない。
汗ばむ額を拭って、ドアを静かに閉めた。ハンカチを持ってくれば良かったな。
ベッドが3床。それぞれカーテンで簡単に仕切られている。ベッドのひとつが、膨らんでいた。これ、青司だろうか。
「……どなたか、居ますか?」
「……」
もしかしたら眠っているのかもしれない。布団を頭までかぶってる……青司じゃなかったら恥ずかしいし……。静かに声を発した。
「具合、大丈夫ですかー……?」
すると、ふくらみが動いて顔を出した。青司だった。なんだよ、居るなら最初から返事してくれれば良いのに。
「危険だなぁ。普通来る?」
「そっちが呼んだんでしょ」
誰が居るか分からないから、控えめに声を出した。言いながらベッドサイドに寄って行った。
「呼んでないよ。保健室に居るってメールしただけだし」
あくびをしながら、あたしを見てニヤリとする青司の憎たらしさよ。体調悪いなんて嘘だね。顔色良いし。
「……あっそ」
「誰も居ないし快適。ちょっと暑いけど」
なんてのんびりしてるんだこいつは。腹が立ったけど、ここでキイキイ怒っても仕方がない。大人だし。



