仕方ない。仕事を途中で抜けて来たようなものなんだから。怒られてしまっても困るし、いまは大事な時期なんだし。
「怒られた?」
「いや、大丈夫。用事が済んだら戻って来てくださいって」
「会えたから、それでじゅうぶんだよ」
そう言うと、青司はあたしの肩を抱き寄せて、額にキスをした。
「ね、華。ほら見て」
体を離されて、手になにかを渡される。なに? 見ると、小さな箱。白くて四角の……これは。
「……はは」
箱を開けてみた。現れたのは、太めのシルバーリングだった。透かしの花柄模様。
「クサイよね。格好付けすぎ」
「なにその乾いた笑い。もっと喜べよ」
そう言うと、青司は口を尖らせた。
これを買いに行った青司のことを想像してみると、照れくさくて、切なくて、幸せな気持ちになる。
「……嬉しすぎて……死んじゃいそう」
「約束したから。だから。あとそれ、俺の首輪だから」
「なにそれ」
青司はリングをつまむと、ホテルの植え込みにあるライトの下にかざした。あたしもそばに寄って覗く。リングをよく見ると、薔薇模様の裏に、刻印がしてある。
『I'll give you all my love.』
「……ぷっ」
「なんだよー! ちょっと、そこ笑うところじゃないだろ」
「だって。なんなの、殺す気なの? あたし青司に愛されすぎて死にそう」



