ハイカロリーラヴァーズ


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 とりあえず、最悪スマホと財布さえ持っていれば、迷子になってもどうにかなるだろう。旅行に行く時はそういうことを考えてしまうあたしの癖だ。

 ライブのオープンは18:00だから、仙台駅を午後出発の新幹線で出ても、じゅうぶん間に合う。

 その新幹線は、もうすぐ東京駅に到着する。寝て行こうと思っていたのに、窓の外を見ながら色々考えごとをしていたら、いつの間にか大宮まで来ていた。

 スマホと財布とは言わず、1泊分の着替えが入った小振りのバッグはちゃんと持って降りる。

 東京で降りたら、メトロに乗り換えて、それからホテルにチェックインして荷物を預けて、ライブハウスへ向かう。予習OK。

 メトロ赤坂駅からすぐのライブハウスだから、2つ隣の駅前にあるホテルを取った。ライブが終わってから新幹線に飛び乗るのもなんだし、なにより、間に合うか微妙。せっかく休みを取れたから、1泊して美味しいものでも食べてから帰ろうと思って。

 新幹線は東京駅のホームに滑り込む。さて、移動だ。バッグを持ち、ホームに降り立った。やっぱり、こっちの方が気温が高いなぁ。仙台は、10月下旬ともなると、夜は冷たい風が吹く。

 スマホの乗換案内と電光掲示板を見ながら、人でごった返す東京駅を進む。いつぶりに来ただろうか……。相変わらず人が多い。祭りでもあるのか。

「メトロは……こっち」

 東京から赤坂駅までは10分かからないけれど、それから2つ進んだところで降りる。まぁ、都会の電車は座れるわけが無いだろうから、寝過ごす心配も無いか。

 ホームに入ると、ちょうど電車が来たところだった。これに乗れば着く。どどっと押し寄せるように電車から出てくる人を避けながら、乗り込んだ。


 青司、リハとか終わったかな。トラブル無くライブが終われば良いな。

 自分もそうだけど、好きなアーティストがライブで歌詞忘れたりすると、なんだか貴重なシーンを見た気がして嬉しくなる。

 青司のファンもきっとそうなんだろうな。本人は不名誉なことかもしれないけど。間違えないで歌うのが最優先だもんね。

 喉の調子は、体調は。気になることがたくさん。

「次は、表参道、表参道。お忘れ物ございませんよう……」

 降りなくちゃ。余計なこと考えてるとうっかりしそう。ひとりだから誰も助けてくれないんだぜ。気楽ではあるけれど。