ハイカロリーラヴァーズ


「池田さん、あなたもしばらく休みなさい。そして、考えていただきます」

 校長が話しているあたしへの言葉だったけど、まるで他人事みたいに聞こえていた。自分のことより、青司のことばかり考えていた。

 話が終わり、校長室を出ると、あたしは事務員室などには寄らず、すぐにビルを出て自転車置き場に向かった。とりあえず、ここから離れよう。青司と連絡を取りたい。

 しばらく自転車を走らせ、途中の公園に着いた。フェンス越しに停めて、公園に入る。ママ友みたいな人達と、3人の小さな子供が遊んでいた。そうか、まだ午前中だ。太陽が高い。

 あたしは公園のベンチに座って、スマホを取り出した。いま、青司はどこに居るのだろう。

 こんなに天気が良いのに、まるで晴れない気持ち。こんなことになるなんて、予想もしていなかった。

 松河先生とあたしは、きっと、謹慎のあとに辞めることになるだろう。あたしだってあんなことがあって、働き続けられるはずがない。青司は退学。大人の勝手に巻き込まれて、青司は……。

 青司の番号をタップする。呼び出しが2回、3回、4回……。

「……はーい」

 意外とすんなり電話に出た青司だった。寝起きみたいな声を出して。

「青司?」

「おお、そっち話終わったの?」

「うん」

「そっか。いまどこ?」

「帰り道。公園に居た」

 キャハハという子供の笑い声。太陽が眩しい。

「そのままうちおいでよ」

「良いの?」

「良いのってなんだよ」

 声が詰まる。

「ごめん、青司、ごめんね」

「泣いてる場合じゃないだろ。話はあとで。早くおいで。待ってるから」
 
 そう。泣いている場合じゃない。あたしは涙を拭って、また自転車に跨った。

 公園ではママと子供達が遊んでいるのんびりした風景。青い空。それをぐるっと見てから、あたしは前を見て自転車をスタートさせた。