言い難い。だって、禁止されていたことをしていたのは、あたしなんだから。
黙っていると、校長が口を開く。
「荻野くんとのことを黙っているからと、脅されたんですね」
「……」
校長は強く言わず、静かに言った。その声に、泣きそうになる。
ふっと短いため息が聞こえた。当たり前だ。隠れて付き合うとかならあるにしても、こんな暴力沙汰になるなんて、前代未聞だろう。父兄から苦情が入っていることだろう。
「生徒に口止めしたところで、ご家庭で出る話題でしょうから。問題になると思います。それには学校側で対応しますから、池田さんは変な行動を起こしたりしないように」
「はい」
やっぱり。目撃者はまわりに言うし、生徒は他の生徒や家族に話すだろう。
「分かりました。松河先生は謹慎。その後はご自分で決断されるでしょう」
このまま在籍するか、辞めるか。謹慎が明けたら自分で決めろということだろう。即刻クビにしないのは、校長の温情なのだろうか。
「警察沙汰にはしたくないとのことです。まぁ、自分もまずいことをしていたわけですから……」
警察という言葉を聞いて、体がびくりとなった。
「荻野青司は、退学とします」
耳を疑う言葉だった。嘘、退学?
「た、退学ですか?」
「クラス担任を殴ったことは、重大なことです。それに……」
校長はテーブルの湯飲みをひとくち飲んだ。
「自分で言い出したことです。荻野くんが」
「……そ、う」
「次の挑戦は、しないということです」
「ほ、本当に……?」
なんということだろう。青司が、辞めるなんて。受験を辞めるなんて。



