「華ちゃん! なんか松河先生が鼻血出して……ええ、なにその服、え? 大丈夫?!」
みんな唖然として見ているところへ、ひとり騒いでいるリエちゃんだった。あたしのそばへ寄って、手を貸してくれた。
「ちょっと、更衣室行こう。立てる?」
「うん……でも、あの」
青司を見ると、床に座って怒った顔をしていた。
「俺は良いから」
「でも」
「いいから、行け」
そのやり取りを聞いていたリエちゃんは、あたしに耳打ちする。
「どういうこと?」
「あとで話すね……」
「とにかく、行こう」
リエちゃんに、更衣室へと連れて行かれた。
だいぶ体調も戻って来ていた。さっきの騒動で、具合の悪さも飛んでしまったように思える。着替えを済ませたところへ、リエちゃんが入ってきた。
「帰宅指示が出たから。とりあえず帰りなさいって。タクシー呼んでおいた」
「え……そう、分かった。ごめん」
「あとから連絡が行くと思う。あと、帰ってからなにか困ったらあたしに直接連絡してね。いまはとりあえず、混乱してるから」
「……リエちゃん、ありがとう」
頼もしい。彼女が居てくれて、本当に良かった。
こそこそと隠れるようにして、あたしはビルを出た。待たせてあったタクシーに飛び乗る。
色々ありすぎて、頭が痛い。眩暈と気持ち悪さは治まったけれど、不安感と不快感は体に貼り付いたままだった。
青司は大丈夫だろうか。
俺の華に。
なんて子供じみてて、でも素直で真っ直ぐな言葉なんだろう。そんな真っ白で綺麗な気持ちをあたしにくれるの。
大変なことになってしまったのに、こんなことを考えているあたしはどうかしていると思う。浸っている場合じゃない。
本当に、大変なことになった。それを実感するのは、次の日だった。



