「華……?」
声が聞こえる。一瞬、誰の声か分からなかった。はな。あたしの、名前。
「居るの? 華ちゃん?」
ドアの向こう。そこから、声が聞こえる。
「せーじ……」
松河先生の動きが止まる。青司が居る。そこに、ドアの向こうに。またサボりに来たの? 昼寝でもしに来た?
「静かに。黙れ」
口を手で塞がれる。このままやり過ごす気だ。
だめ。青司、気付いて、お願い。ここに居るの。気付いて。青司、青司。
「……たすけて!!」
腹に力を入れて叫んだ。大きな音を立ててドアが開く。すると、青司が飛び込んで来た。みるみる表情が変わる。
「て、めぇ! なにしてんだ!」
「荻野」
「歩いてるの見えたからあとをつけたらこんな……離れろ、クソやろうが!」
松河先生は、自分で体をあたしから離す暇も無く、青司にシャツを掴まれ、床に落とされた。そのままドアの外まで蹴り飛ばされた。あとをつけた? 見ていたの? 今日は来ていたのか……。
「ぶっ殺す!」
四つんばいから起き上がろうとする松河先生に、青司が殴りかかった。そのまま、マウントポジションを取る。
「やめて、だめ」
「てめぇなんなんだよ! マジでぶっ殺すぞ!」
「荻野! 違う」
「青司……!」
ここから見えるのは入口ドア分のスペースしか無いけれど、悲鳴が聞こえるから廊下に生徒が居るらしい。
まずい。これは本当にまずい。



