「ふうん……」
腑に落ちないような顔をして、青司は言った。
「じゃあ、まぁいいや。プリンひとりで食べるよ」
プリンって、もう。子供か。
「明日、行くから。ていうか、うちおいで」
ちょっと適当に返事をしてしまったから、明日は埋め合わせをしたい。あたしだって、一緒に過ごしたい。
「夜?」
「夜でも朝でも別に良いけど」
「んじゃ泊まる」
「好きにして」
小声で交わされる会話。もしどこからか誰かが見ていても、なにかしら手続きの話だって言い訳ができる。この程度ならば。
あたしはもう一度まわりと見回した。大丈夫。誰も居ない。すると青司は、ポケットから
「あ、これ。ハイ」
青司の指にぶら下がったのは、ひとつの鍵。さっき持ったばかりの段ボールをまた置こうとすると、青司が「あ、いいよそのままで」と言って、制服のポケットにそれを滑り込ませてきた。
「なにこれ」
「うちの合い鍵。朝、作ってきた」
朝。あたしが松河先生に捕まっている時、青司はあたしに渡す合い鍵を作っていた。
なんだかとても複雑な心境だけれど……。
でも、ポケットに入っている鍵。ああ、なんだか新鮮というか。恋人同士みたい。いや、実際そうなんだけど。なんか、くすぐったい。
「食うなよ」
「食べないよ……」
「じゃ。行くわ」
「あ、うん……」
バイバイと手を振って、青司が走って行った。その途端、襲ってくる不安。一緒に居たいけれど、いまはだめ。でも、ひとりにしないで欲しい。去っていく背中を追いかけたい衝動に駆られながら、ぐっと唇を噛んだ。



