教室を出て、C組に向かった。

俺の「同居人」がいるクラスだ。



そしてC組には、陸玖がいる。

早速、絡んできた。

「あ、お兄さんだ」

「バカ。ざけんな」



俺は、教室を見渡す。

「どれ?」

「え?」

「アイツだよ」

「知らないの?」

「どれだよ」

「あの子…」



「ジミ」



即座にそう思った。


ガリガリに痩せた小さい子だった。

髪は肩くらい。

ツヤがなくて、顔色も冴えない。

高校生というより、中学生に見えた。



みんなに囲まれて質問攻めにされている。

なのに、ボーッとした顔をしていた。ブサイクじゃないけど、可愛くもない。

例えていうなら…

知名度がない、ゆるキャラ?



これが家に来るのかよ…

関わりたくねーな。


それでも俺は、親父に頼まれた伝言があった。

人をかき分け、近づいて声を掛けた。



「おい」



ゆるキャラが、顔をあげた。

ぼやっとしたツラだなあ。

眼鏡が田舎くさい。


「村瀬だけど…あ、立ち上がらなくていい」


立ち上がり方で分かった。

コイツ、ノロいな。



「今日の夕飯、外で食うから、6時までには家に居て」

「はい」

声は悪くない。


「はい…じゃなくていいよ」

「は…う…」

「メアド教えて」

「ないです…」

「…ねーの?」

「はい…あ、う…」

「じゃ、いいや」



俺はさっさと退散した。