それから昇は、
自分の家の育児事情を説明した。


赤ちゃんには、
ぐずる時も非常に多いこと、
赤ちゃんの面倒を見るというのは、
予想以上に
思い通りにいかない時のほうが多いこと、
時には、赤ちゃんが夜に起きたため
妻が夜、何時間かおきに
授乳しなければいけなかったこと。


妖精の存在のことは、
信じてもらえそうもないので
あえて言わなかったが。


昇の話を聞き終わると
同僚の顔つきが変わった。


『そうなのか…
とても大変だな。
280日も,自分の中で小さな命を育て命懸けで出産するのか。
大仕事だな、本当。
そういえば,妹も,妊娠中大変そうだったな。


夜に何時間かおきに授乳しないといけなかったら、全く安心して
眠れないな。
大変だな、
夜もおちおち安眠できなかったら、大変だな、
子供の世話って大変だな。


ちょっと、想像つかないや。

育児してる人って、
特に赤ちゃんの育児してる人
大変なんだね・・。



思えば、
話すことのできない
赤ちゃんに泣かれるってのは
余計戸惑うなあ…

せめて、なぜ泣くのかを
教えてくれるならばまだ
いいけどね。
人を育てるって大変なんだな、男女どっちも
生半可な覚悟で親になることはできないな。』

同僚が言った。



『そう思う。世の中には、育児で悩みながら、日々頑張ってる母親、父親がたくさんいるんだよね。母親、父親も、初めからベテランの母親、父親じゃないし、始めから何もかもうまくできるわけではないんだし、
母親父親だって、親一年生から始めるものなんだし、
時には誰かに相談したり、手伝ってもらったり助けてもらったりしてかまわないとおもう。』
と、昇。


その後日。
昇が、電車に乗ってると
隣に座っている同年代くらいのスーツ姿の男の人が数人、
女優の北山景子や、モデルのアビちゃんが表紙にのってる雑誌を読みながら、話していた。

「うちの嫁さんさー、
そりゃ、5〜7kgならともかく
産後十数キロ増えたんだよ、
そりゃ育児忙しいってのわかるけどさ
産後八ヶ月経ってんだから
アビちゃんみたくいい加減元のスタイル戻ってくれないかな」
と、1人が、蔑むように言う。

すると昇も腹立ってきた!
自分の嫁さんや、
親戚の女の人が、もし、そう言われてたら!

「たしかに、アビちゃんや、北山景子、
産後半年と思えないほど
スタイル抜群ですね!

でもそれは、
旦那さんの稼ぎがずば抜けてぬきんでて高く、
シッターや家事代行サービスなども頼めるからこそ維持できるスタイル美しさなんですよね!

よほどのセレブでお金持ちでないかぎり
一般の人がタレントさん並みの生活はできません
タレントさんと一般人の生活は、やはり、大差があります」

と、言い張った。
その男の人たちは、気まずそうになる。