「何か、奥のほうが異様な雰囲気ですね。多分、あっちが寝所です」

 縁の下を進みながら、羽月が密かに屋敷の説明をする。
 真砂も進みつつ、神経を尖らせた。

「夜中だってのに、確かに向こうのほうは、人の動く気配があるな」

「やっぱりまずは、千代姐さんかあきさんに渡りをつけたほうがいいと思いまして。より人の多そうなところを探り当てたんです」

 羽月が、言いつつ立ち止まった。
 そして、相当先のほうを指差す。

「……あんなところか」

 羽月の指差すほうは、縁の下でも相当狭い。
 故意にそこだけ、いろいろな梁を巡らせ、忍びの者でも、そうそう入り込めないようになっている。

「座敷牢か、茶室……だろうな」

 武家の茶室は、密議の場に使われるため、床下に入り込めないようになっていたりするものだ。
 座敷牢であれば、当然逃亡を防ぐため。

「実はあそこで、千代姐さんを見つけたんです。まだ時刻も早かったので、畳の隙間から見ただけですが、牢のような気がします。何度か、鍵を開けるような音がしました」

「千代を見つけたのか」

「はい。と言っても、やっぱり姿をちゃんと見たわけではありません。人がいるようでしたので、細い隙間から無事であることだけを聞いただけです」