捨吉は元々、真砂と途中までは一緒に行くことが許されている。
 だから堂々とついて来られたのだが、清五郎はそうではない。

 かといって後をつけたりしたら、あの真砂が気付かないわけがない。
 ということで、随分と時間が経ってから、清五郎は一目散に二人を追って来たのだった。

「あの真砂のことだ。一刻二刻じゃ、真砂の出立前にこっちがぴりぴりしている空気を読んでバレてしまう。真砂を送るときも平然としていられるよう、こっちの出立を随分開けたんだが、その分大変だったぜ。休みもろくろく取らずに走り通しだ」

 そうは言うが、別に清五郎は息も乱れていない。
 さすがである。

「真砂は、いつ頃発ったんだ」

「えっと、昼前にはここに着いて、少し休んでから。もう二刻ぐらい経ってます」

「よし。行くぞ」

 そう言うと、清五郎は疲れていることなど微塵も感じさせない足取りで駆け出した。
 捨吉も慌てて後を追う。

 二人の姿は一陣の風となって、九度山のほうへと消えた。