「な、何を仰るんで?」

「頭領をそのようなところにお一人でなど、行かせられるわけないじゃないですか!」

 そうだそうだ、と口々に言う皆を、真砂は手を振って黙らせた。

「今回の姫君奪還は、指令でもない。完全に、俺がそうしたいだけなんだ。俺一人の単なる我が儘のために、皆を巻き込むわけにはいかん」

「頭領の願いとあらば、我らの願いも同然です!」

 一人の男が、きっぱりと言う。
 真砂はちょっと驚いた。

 何かと皆真砂を頼りはするが、それは真砂が頭領だからであって、個人的に慕われているわけではないと思っていた。
 清五郎や捨吉などは、昔からよく『真砂は慕われている』と言うが、真砂自身にはとても信じられなかった。

 今はともかく、昔は皆を仲間とも思わなかったのだ。
 そのような者のことを、誰が本気で慕うというのか。

 だがどうやら、そう思っていたのは真砂だけだったようだ。
 真砂は無条件に人を惹き付ける。
 皆、恐れつつも、その力に抗えないのだ。

 知れば知るほど、心底真砂に惚れてしまう。
 上に立つに相応しい器量の持ち主なのだ。