「千代姐さん。もう大丈夫なの?」

 捨吉が粟飯を掻き込みながら言う。
 こくりと千代が頷いた。

「良かった。ほんとにたまげたよ。頭領が一回屋敷から離れた後で、もう一回見張れって指示してくれなかったら、完全に見逃してたし。それでもまさか、川に捨てるなんてさ」

「あんたが掴んでくれたお蔭で、助かったよ」

「あれだって、頭領が引き上げてくれなかったら、やばかったですよ。俺、全然自力では上がれなかったもん」

 捨吉と千代の会話に、嫁は小さくなる。
 やはり、真砂を呼ぶべきだったかと後悔しているのだろうが、源七郎が、そんな嫁の頭に手を置いた。

「何、気にすることはないよ。頭領は人の作ったものは、絶対に食べないし」

「そ、そうなんですか。確かにご自分でも、そう仰ってましたが」

 ちょっとほっとしたように、嫁は表情を和らげた。
 清五郎と捨吉、千代は、黙って箸を動かす。
 三人は、真砂は深成の作ったものなら食べることを知っているのだ。

「でも、指令がないと町に行くこともないし、つまらないなぁ」

 夕餉を食べ終えた捨吉が、箸を置いてぼやいた。

「結構なことじゃないか。あんな大きな戦があったんだ。しばらくは、静かに過ごしたいもんだぜ」

「え~? 清五郎様、おじいちゃんみたい」

 ぷぷぷ、と笑う捨吉に、清五郎は、ごん、と拳骨をお見舞いした。