「ま、真砂様……」

 泣き出しそうに呟き、だがこのまま母屋の連中の注目を集めておくのも我慢ならない。
 千代は、キッと母屋から見つめているあきたちを睨み付けると、真砂の後を追った。

「……はぁ。相変わらず、千代姐さんは凄いわねぇ」

 ややあってから、ゆいが感心したように言った。

「あの頭領に、あんな態度取れるなんて。あたしなんて、初めに『おい』って言われただけで、竦み上がっちゃうわ」

「男の人には、あれぐらい積極的に行かないと駄目なのかな」

 あきが、少し顔を赤らめて言う。
 途端にゆいが、がば、と身体ごとあきに向き直った。

「何、あき。あんた、誰かそういう人でもいるの?」

「え、う、ううん。そういうわけじゃないけど……」

 もじもじと、用意していた芋を剥く。
 ゆいは山菜の葉をむしりながら、話を続けた。

「まぁ、ある程度の積極性は必要かもね。里では、まぁ千代姐さんみたいに好いた男がいれば別だけど、別に必要ないと思う。でも任務のときはさ、こっちから相手の懐に入らないといけないじゃない。それには積極的に、相手に迫らないと」

 そういう女技を使った任務にかけては、やはり千代は優秀なのだ。