あたしは咄嗟に机から離れる。


勉強を教えてもらいに来ただけだけど、さっきキスしてしまったという後ろめたさから逃げ腰になってしまう。


「あれ？　野上（ﾉｶﾞﾐ）？」


先生は完全に目を覚まし、すぐにあたしの存在に気が付いた。


寝起きのくぐもった声で名前を呼ばれ、ドキッとする。


「お、おはよ先生。めっちゃ寝てたじゃん！」


あたしはドキドキしていることを悟られないように、いつもの調子で明るくそう言った。


「おぉ～。めっちゃ寝てた。ここ空調がきいてて気持ちよくてなぁ」


そう言い、大あくびをする。


「だからって仕事しないで寝てていいの？」


「ん？　いや、よくない」


先生はそういい、八重歯をのぞかせて笑う。


あたしは先生のこの笑顔が大好き。


可愛くて、抱きしめたくなる。


「で？　詩（ｳﾀ）はなにしにここに来たんだ？　涼みに？」


突然先生があたしの下の名前を呼んで、ドキッと心臓が高鳴る。