「そ、そうでした……」


そう言うと、先生はまた笑い始める。


なんだかすごくバカにされている気分になってきて、あたしはムッとして唇を突き出した。


「なに? まだキスをねだっているのか?」


「ち、違う!!」


茶化してそう言ってくる先生に、あたしは首を左右に振って否定する。


「なぁんだ。俺はしたかったのに」


すると先生はそんな事を言って、少し残念そうな表情を浮かべる。


眉を下げたその表情は子犬のように可愛くて、あたしの胸はキュンッとなった。


こ、こんな顔するなんて反則!


あたしの中の母性本能がくすぐられて、思わず抱きしめたくなる。


「詩は? 俺とキスしたくない?」


「そ……それは……したいけど……」


「それじゃぁ……ん」


先生は「ん」と言って目を閉じた。


え?


これってキスしろってこと?