「先生……」


そっと声をかける。


しかし柳本先生は気づかない。


しばらくの間、あたしは先生の寝顔を見つめていた。


世界でたった1人。


今、あたしだけが先生の寝顔を見ているんだ。


そう思うと、先生のファンの中に混ざっている自分が、やけにちっぽけな存在に思えた。ねぇ先生。


あたしはどうやったら先生の特別になれるのかな……。


そんな質問を直接できればいいのに……。


あたしの胸はギュッと誰かの手によってわしづかみにされて、苦しさにうめいた。


でも……それでもあたしは、先生が好き……。


あたしはそっと先生の寝顔に近づいて、その頬にキスをしたのだった。