柳本先生の意外な一面を見てしまった日、あたしはどうやって家まで帰ったのか覚えていなかった。


頭の中は真っ白で、何度も先生との濃厚なキスが蘇り、その度に心臓がドクドクと高鳴った。


家に帰るといつも通りアランが駆け寄ってくるが、それを無視して、晩ご飯の準備もせずに2階の自室へと向かう。


一番奥の部屋に入りドアを閉めて、そのまま倒れるようにしてベッドに横たわった。


あれが、先生の本当の姿?


あたしを見て意地悪そうに笑う先生の顔。


いつも優しくてかわいくて、初々しくて天然で。


だから女子生徒からも人気のある柳本先生。


そんな先生が、あんな意地悪なことするなんて……。


あたしは枕をギュっと自分の顔を押し当てた。


「信じらんない!!」


その状態で大きな声で叫んだ。


声はくぐもり、外には漏れていないハズだ。


でも、今は叫びたい気分だった。