先生の本当の顔が見られたという事で、あたしは思わず笑顔を浮かべていた。


卑怯なことをしているのだという気持ちよりも、嬉しさの方が勝っていた。


「昨日忘れ物を取りに来たときに偶然聞いたんです。安岡君と杉田君と、先生の話を」


「……あの時いたのか……」


先生はそう言い机に肘をついて頭を抱えた。


「黙っていても、いいですよ?」


あたしは尻餅をついたままの状態で先生を試すようにそう言った。


「本当か!?」


先生がパッと顔を上げる。


「……ただし、交換条件があります」


「交換条件……?」


「はい。柳本先生、あたしの彼氏になってください」


そう言うと、先生はポカンと口を開けてあたしを見つめた。


「本気か……?」


「もちろんです。あたし、ずっと先生のことが好きだったんですから」


「……そうだったのか……」


その言葉に、あたしはムッとして先生を見つめた。


キスまでしたんだから、好きだということに気が付いていてもおかしくない。


先生はまだ、あたしに本当の顔を見せてくれていないんじゃないか。


そう、思ったのだ。