男の言葉にますます首を傾げる。


あ、でも。


先生がアパートに住んでいることは疑問に感じていたんだった。


こんな大きなマンションを持っているとなれば、その疑問は更に大きくなる。


「それって、どういう事?」


敵である男に先生の事を聞くなんて少し嫌だったけれど、どうしても気になってそう聞いた。


「生まれたときから決められたレールを歩いてんだよ、あいつは。


これだけの資産がある両親だから将来家を継ぐことは決まっていたんだ。


それが嫌で小さなアパートを借りて、1人で自分の金だけで生活をしている。少しでも、家から離れるためにな」


そう……なんだ……。


「で……でも、先生は家族のことが嫌いなワケじゃないんでしょう?」


先生を見ていると、愛情をいっぱい感じることができる。


それはきっと、先生が愛されて生きてきたからなんだと思う。


「あぁ。家族を嫌っているワケじゃない。ただ、親抜きで自分の手で何かをしたいんだろうな」


男の言葉にあたしはホッと胸をなで下ろした。


よかった。


先生、ちゃんと家族の事は好きなんだ。