あたしの手にはじっとりと汗がにじんでいた。


先生との特別な時間を、あたしは絶対に忘れない。


《看病してくれてサンキュ。おかげですっかり良くなった》


「へ……?」


想像していた言葉と先生の言葉が違って、あたしは一瞬キョトンとしてしまう。


《礼が言いたかっただけ。それじゃ》


「え? ちょっと待って、先生!?」


あたしがそれだけを言い終わる前に電話は切れて、機械音が響きだす。


「別れの電話じゃなかったの……?」


あたしは携帯電話を見つめてそう呟く。


ホッとするような、拍子抜けするような気分だ。


でも……。


看病したことのお礼だけ言って切るなんて、やっぱりおかしい。


先生は何か言いたいことを我慢しているように感じる。


それは一体なんだったのか、すごく気になってもどかしい気分だ。


あたしは携帯電話の画面に先生の番号を表示させた。


今度はあたしからかけてみようか?


でも、電話をかけてなんていえばいいんだろう?