一階からお母さんが呼んでも、携帯が鳴っても、あたしはそれに反応しなかった。


泣くだけ泣いたら、今度は胸の中に穴があいてしまったような喪失感に襲われ、何もやる気が起きないのだ。


休日をこんなふうに無駄過ごすのは久しぶりのことだったけれど、それは全然嬉しいことじゃなかった。


少しでも油断したらまた先生のことを思い出してしまう。


それが怖くて、あたしはギュッと強く目を閉じた。


泣き疲れているのだからこのまま眠れたらいいのに……。


そう思うが、実際はそんなにうまくいかない。


ベッドの上で何度寝がえりをうっても、眠気は襲ってこなかった。


普段の授業中や昼下がりの教室ではあんなにも眠たくなるのに。


いくら待っても襲ってこない眠気に、あたしは諦めて目を開けた。


「ふぅ……」


と、小さく息をはきだして天井を見上げる。


「……カンナに、なんて言おう……」