楽しかったこと、ドキドキしたこと、好きが溢れだしそうになったこと。


思い出しても思い出しても、嫌なことなんて1つもなかった。


怖い経験だって、思い出せば愛しかった。


だから……。


「はっ……はっ……」


気が付けば、あたしは夢中で走っていた。


先生に会いたい。


柳本先生に。


……悠真に……会いたい!!


汗が落ちてコンクリートに黒いシミを作る。


靴の底が地面とぶつかり音がなる。


足が地を蹴り、前へ前へと進んでいく。


腕が、先生を求めて空へ伸びる。


「悠真……!」


足の先から湧きあがる感情が1人の異性の名前を呼ばせる。


ああ……。


あたしは全身で先生のことが好きなんだ。