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それから家に帰るまで、あたしとカンナは柳本先生の話題で盛り上がっていた。


今日下駄箱で見た光景はカンナにとって衝撃的だったらしく、「意外だよね」という言葉を何度も繰り返していた。


「柳本先生は若いから生徒からもしっかりしてないって、思いこまれちゃうんだよ。でも、実際は全然違うよ。


授業とかでも生徒のことすごい考えてくれてるし」


あたしは昨日見た先生の教科書を思い出してそう言った。


「へぇ……そっかぁ」


カンナは、先生の事ばかりペラペラとしゃべるあたしに向かって微笑む。


「あたしも、たまには柳本先生の授業をちゃんと聞いてみようかな」


「そうしなよ! 先生の授業はわかりやすくて面白いんだから。あたし数学苦手だったけれど、好きになっちゃったし」


あたしがそう言うと、カンナはふふっと笑った。


「詩が好きなのは数学じゃなくて先生でしょ?」


そう言われ、顔がカッと熱くなる。


「な、なに言ってるの?」


「だって、すぐに顔が赤くなるもん」