あたしは勢いにまかせてドアをノックし、そして開けていたんだ。


部屋の中には予想通り浦木先生が仁王立ちしていて、その前に柳本先生が立っていた。


大きな体をなるべく小さくして、反省している様子を見せている先生。


「せん……せ……?」


走ってきたせいだけじゃない。


心臓がドクドクと音をあげて、背中に汗が流れた。


「あらあなた、野上さんね」


浦木先生がすぐにあたしの名前を呼ぶ。


沢山の生徒の名前と顔を全員覚えているワケじゃないだろうから、今回の件が原因で調べたのだろう。


「……はい」


あたしは素直にうなづいた。


「あなた、昨日柳本先生の車に乗っていたのですか? 生徒たちの間でそのような噂が出ていますが、どうなんですか?」


浦木先生は赤いメガネをかけなおしてそう言った。


「あ……」


あたしはどう返事をしていいかわからず、視線を空中へと泳がせる。


だめだ。


いい言い訳がなにも浮かんでこない。