イケメン先生は危険男子でした!?

漠然とした不安に包まれているうちに、気が付けば家の前までやってきていた。


「ぼーっとして、大丈夫か?」


悠真が心配そうにあたしの顔を覗き込む。


あたしは慌てて笑顔を浮かべた。


「だ、大丈夫だよ!」


「無理するなよ? 今日は衝撃的な場面を見てしまったんだから」


そう言い、悠真があたしの頭をポンッとなでる。


悠真はあたしの事を心配して言ってくれているんだ。


それは、頭ではわかっている。


でも今のあたしには『無理するなよ』は『いつ別れてもいいんだぞ』と、言われているようで……。


胸の奥がぎゅぅっと痛んだ。


悠真が【黒龍】の総長だということも、頭で理解するよりも現実は遥かに違った。


わかっていたのに、追いついていけない部分がたくさんある。


「……詩。怖かったんだろ?」


悠真にそう言われて、あたしは「え?」と、首を傾げた。


「気づいてないのか? ほら、震えてる」


悠真があたしの膝に手を置く。


「あ……」


本当だ。


今まで気が付かなかったけれど、足が微かに震えている。