その後スタッフルームに現れたのは本物の息子さんで、悠真のドスの利いた質問にすべての悪事を薄情した。


相手の子は小さな暴走族のトップをしていて【黒龍】の有名さを逆恨みしてそのような行動に出たのだそうだ。


あまりに幼稚な動機にあたしと悠真は呆れてしまい、山口君への謝罪と山口君の汚名返上を手助けするということで、開放された。


「なんだか案外アッサリ解決できてよかったね」


帰りの車の中あたしは運転席の悠真へ向けてそう言った。


「それは詩がいたからだ」


そう言った悠真の声は小さくて、BGMにかき消されてしまった。


「今なんて言ったの?」


「……今日は星が見えないなって言ったんだよ」


「あ、本当だね。少し曇っているね」


あたしは車の窓から空を見上げてそう返事をした。


「なぁ、詩」


「なに?」


「俺と一緒にいたら、今回みたいなことがいつ起こるかわからないぞ?」


「え?」