しかし、安岡君はその質問に静かに首をふったのだ。


「なにも、してない」


「へ……?」


あたしはキョトンとして安岡君を見る。


なにもしてないって、どういうこと?


なにもしていないのに、袋叩きにあったってこと?


「誰かが、【黒龍】のそいつの名前を使って好き勝手に悪事を働いていたんだ。それが原因で、今までの被害者たちがあいつを攻撃してきたんだ」


「そんな……」


あたしはその言葉に顔をしかめる。


他人の名前をかたって悪事を働くなんて、卑怯すぎる!!


「今日はそのことで急きょ集会を開くことになっているんだ」


「その集会、あたしも行きたい!!」


あたしは咄嗟にそんな事を口に出して言っていた。


この前集会に参加したばかりで、また夜に抜け出すなんてきっと無理だ。


それでも、【黒龍】のピンチにのんびり家で待っているなんてできない。


「そう言うと思った」


杉田君はそう言って笑った。