あたしはふぅと息をはいて、部屋着に着替える。


一階では両親があたしが起きるのを待っているだろう。


トントンと軽く足音を響かせて階段を下りる。


緊張を押し込めてリビングのドアを開いた。


すると……テレビの音と両親の笑い声が聞こえて来て、いつもの光景が広がっていた。


「おはよう……」


小さな声でそう言うと、2人が振り向いて笑顔を浮かべる。


「詩、もうお昼よ?」


「昨日遊び過ぎたんだろう」


そう言って笑う。


全然怒っているようには感じられなくて、あたしはキョトンとしてしまう。


「詩、ご飯食べる? もうお昼だから朝ご飯のオカズは残ってないわよ?」


「あ、あの……。昨日のこと、怒ってないの?」


あたしはお母さんの言葉に返事をせずに、2人を交互に見つめる。


「怒っていないと言えば嘘になる。


でも、ああやってちゃんと家まで送り届けてくれたんだ。柳本という家はこの街に沢山の寄付もしている。


いつまでも怒っているワケにはいかないだろう」


お父さんが眉間にシワを寄せてそう言った。


「お父さん……」


渋々ながらの先生のことを認めてくれているようで、あたしは思わず笑顔がこぼれた。