「わかった。娘を送り届けてくれたことには感謝する」


そう言い、お父さんはあたしの腕を掴んで玄関の中へと引き入れた。


先生はまだ頭をさげたまま上げようとしない。


「なんで……?」


思わず、そう言っていた。


「なんで、そこまでするの……」


あたしのこと、別に好きじゃないんでしょう?


あたしが脅すことをやめれば、先生は解放されるんだよ?


携帯の中の証拠だって、全部嘘なんだよ?


次々と言葉があふれ出すが、それは声にならずに消えて行く。


ここで言ってしまえばあたしと先生の関係はすべて終わってしまう。


そう理解しているから、言えないんだ。


あたしは……ずるい。