その言葉にあたしは目を見開いた。


「悠真、うちの親に挨拶するつもり?」


「あぁ。まぁ、こんな時間だし、お前どうせ親に何も言わずに出て来てるんだろ? だから、挨拶にはならないだろうけどな」


先生はそう言い、笑う。


「そんな……笑いごとじゃないよ……」


挨拶なんてしたら、先生が悪者になってしまうかもしれない。


それなのに、先生はあたしを押しのけて玄関の前に立った。


「こんな時間に非常識だって思われちゃうかもよ!?」


あたしは慌てて先生の服を後ろから掴む。


「悪いけど詩、俺は元々常識なんて持ち合わせてないんだよ」


先生がそう言い、ニコッと笑う。


そして、玄関のチャイムを鳴らしたのだった。