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先生の特別な場所から戻って来たあたしは、家の前で車を下りた。


家の電気は当然真っ暗で、中から物音も聞こえない。


お父さんとお母さん、あたしがいないことに気が付かずに寝たんだろうなぁ。


そう思いながら玄関へ向かおうとした時、車の運転席から先生が出てきた。


「先生?」


さっき車内でバイバイしたのに、どうしたんだろう?


先生は「やっぱり、このまま1人で帰すワケにはいかないだろ」と、頭をかく。


へ?


どういうこと?


あたしはキョトンとして先生を見る。


「こんな身なりだし、本当はこんな状況で詩の両親に会うのは嫌なんだけどな」


そう言って、先生はネックレスを外してズボンのポケットに入れた。


「悠真、どうしたの?」


先生の考えが読めずにあたしは首を傾げる。


「こんな夜中まで詩を引っ張り回しておいて、挨拶なしってワケにはいかないだろ」