バイクの後ろに乗るというのは初めての経験で、風を切って行く速度にあたしは思わず目をつむった。


それほどスピードは出ていないと思うけれど、車で感じる体感速度の何倍ものスピードを肌で感じる。


時々目を開けて流れて行く景色を見るけれど、それを楽しむ余裕なんてなかった。


風圧によって体がバイクから投げ出されそうな感覚があり、あたしは安岡君の体にしがみつくだけ精いっぱいだったのだ。


そんなスリリングな初体験をした後、あたしたち3人は丘の上にある広い倉庫の前に来ていた。


バイクを下りてからも少し体が震えていて、まるで遊園地の絶叫マシーンに乗った後のような感覚がした。


でも……。


「わぁ……綺麗」


ふと空を見上げると何も邪魔する物のない星空が広がっていて、あたしは思わずそう漏らした。


「だろ? 今日は特に綺麗に星が出てるな」


安岡君が同じように空を見上げてそう言う。


あたしは視線を下へとうつした。


丘から街を見下ろしてみると、ここは学校の裏手にある高い丘だということがわかった。