それはまるで夢の中のような話で、あたしは自分の頬をキュッとつねった。


「痛っ!」


「は? 詩、お前なにしてんの?」


運転中の先生が驚いたようにこちらを見る。


あたしはあははと笑って「夢か現実か確認してみた」と、返事をした。


「はぁ……やめろよそういうの」


「だって、現実味がないんだもん」


あたしがそう言うと、先生はしばらく走った場所で車を止めた。


そこは人通りの少ない裏路地だった。


「先生どうしたの? こんな場所になにかあるの?」


あたしは周囲をキョロキョロと見回す。


周りは背の高いビルばかりで、面白そうな場所は見当たらない。


と、その時だった。


不意に先生があたしの肩に手を伸ばし、グイッとあたしの体を引き寄せたのだ。


「へ?」


キョトンとしたままのあたしの唇に、先生の唇が押し当てられる。