浮き足立ちながら助手席へ乗り込むと、なんだか本物のデートみたいでドキドキしてくる。


「で? どこか行きたい場所は?」


そう聞かれて、あたしは言葉を詰まらせてしまった。


どうしよう。


行きたい場所なんて考えていなかった。


先生と一緒に過ごせるというだけであたしは満足だけど、先生にとってはつまらないかもしれない。


「なに? なにも考えずに俺をデートに誘ったの?」


「うっ……」


図星を付かれてあたしは口ごもる。


「ま、いっか。とりあえずドライブでもしようか」


「うん!」


先生の車でドライブができるなんて、思ってもいなかった。


先生はあたしにとってすごく遠い存在で、近づくことなんでできなくて。


想いを伝えることも困難だと思っていた。


それが、今は手を伸ばせば届く距離にいる……。