この至近距離であたしの心臓は爆発寸前なのに、先生はそんなこと気が付くこともない。


前のめりになったこの体勢なら、先生の位置からあたしの谷間は丸見えのハズなのに、先生はそんなことも全くに気にしていない。


あたしは先生から雑に教科書を受け取り、体勢を戻した。


心臓はまだドキドキ言っている。


「仕方ないなぁもう!!」


怒っているフリをして頬を膨らませ、教科書を開いた。


先生の教科書には隙間がなくなるくらい走り書きがしてあり、それは生徒に教えるために必要なことばかりだった。


なんだ……案外しっかりしてるんじゃん。


いつも天然だと言われ、少し抜けているところがある先生。


『あたしが守ってあげたい!』


なんて言う女子生徒たちもいるけれど、やっぱり先生は先生なんだ。


「詩、このページわかる?」


先生はもう一冊教科書を用意し、あたしに見せてくる。


「そこはわかるよ。めっちゃ簡単だもん」


「そっか。じゃぁもうちょっと難しページから出題しよう。あ、詩もわからないところがあれば言えよ? 教えてやるから」


「はぁい」


こうして、あたしと先生の放課後は過ぎて行ったのだった。