「どうしよう……」


膝から血が流れてコンクリートに赤いシミを作る。


これじゃぁ走ってアランを追いかけるのは無理だ。


一旦帰って手当をして、それからまた探しに出ようか。


でも、その間にアランが事故にでもあったらどうしよう……。


どうするのが最善かわからなくて、その場に立ち尽くしてアランが走って行った方向を見つめる。


そうしていると不意に後ろから「なにしてるんだ?」と、声をかけられて、あたしは振り向いた。


「先生!?」


そこにいたのは私服姿で車の運転をしている柳本先生だったのだ。


先生は車を脇へ寄せて窓から顔を出している。


その光景がすごくかっこよくて、あたしは顔が熱くなった。


「お前、足どうした?」


「え?……あぁ、さっきこけちゃって……」


「はぁ? こけたぁ?」


先生が呆れたようにそう言う。


「犬の散歩してたら急に走りだして、慌てて追いかけてたらこけたんです」


「あぁ。なるほど」