あたしはアランに話かけながら、来た道を戻ろうとする。


いつもすんなりと言う事を聞くアランだが、この日は様子が違った。


しきりに鼻でにおいをかぎ、なにか興奮しているようにせわしなく動き回る。


「アラン、どうしたの?」


不思議に思ってそう聞いたとたん、アランは走りだしたのだ。


咄嗟のことであたしの手から散歩ヒモがするりと抜ける。


「アラン!!」


一気に駆け出すアランを慌てて追いかけるあたし。


この辺りは交通量も多くて危ないんだ。


「アラン待って! 止まって!!」


必死にアランを追いかけて声をかける。


しかしアランは一切止まろうとしない。


必死で追いかけている途中で足がもつれ、あらしはその場にこけてしまった。


コンクリートに膝と手を打ち付けて顔をしかめる。


「いったぁ……」


見ると、血がジワリと滲んでくるのが見えた。


アランはあっという間に見えなくなり、あたしはようやくその場から立ち上がった。