どくん、と胸が重たい音を立てた。
こちらに背を向け、壁にもたれるようにして座りこむお父さんは苦しげに息をしている。
その周りには、赤い液体が飛び散っていて……
「お父さん! どうしたの! 大丈夫……!?」
「ココ……」
しゃがみこんでその顔をのぞくと、顔色は真っ青。
口の端からはつうっと血が伝っていて、混乱したあたしの目からぶわっと涙が溢れた。
なんでこんなことになってるの?
なんで、お父さん……
「ココ、救急車呼ぼう」
涙を流して呆然と座り込んでいたあたしの肩を、真咲がそう言ってゆする。
「どうしよ……真咲……」
お父さん、死んじゃうの……?
こんなにたくさんの血を見たことがないあたしは、そんな最悪のことまで考えてしまって、なかなか動けない。
「きっと大丈夫だから。ココ……早く」
床に手をついていたために赤く染まったあたしの手に、真咲が自分のスマホを握らせた。
あたしは鼻を啜って小さく頷くと、119を押した。
電話に出た人に必死でお父さんのことを説明して、とにかく早く来てくださいってことを、何度もお願いした。
その間にもお父さんは何度か血を吐いていて、あたしの中は不安と恐怖でいっぱいだった。
お父さんがいなくなるかもなんて、考えたこともなかった。
帰りが遅くたって、会話がなくたって、いなくなるのはやだよ。
お願いだから、あたしのこと、一人にしないでよ……

