「そ、だね……こういう日は、特別じゃない?」
「ココも可愛い浴衣着てるしね」
「これは、カナコに無理矢理……」
「……みたいだね。でも、ナイスカナコちゃん。そのカッコ、なんか俺の勇気後押ししてくれる気がする」
にこっと微笑んだ真咲が、そっと身を屈めた。
そうして、鼻先が触れそうなくらい、あたしに顔を近づけてくると。
「ココ……まだ、返事できない?」
聞いたことない大人っぽい声で、そうささやいた真咲。
「へ、へんじ……って……」
何を聞かれてるかはわかってる。
でも、近いって。近すぎるって。
そんな距離で聞かれても、冷静に考えられない……!
「言葉出ないんなら、俺が勝手に、クチビルに聞いちゃうよ?」
……それがキスの予告だったなんて、恋愛未経験のあたしにわかるはずもなかった。
首を傾げて困ったように真咲を見つめたら、大きな手があたしの頬を包み込んで。
「―――――っっ!?」
呼吸が、心臓が、止まりそうになるくらい、突然唇に触れた熱。
時間が止まったみたいに、何も聞こえない。
……ううん、聞こえる。
自分の心臓の音ばっかり、うるさいくらい耳の奥に響いていて。
目を閉じることもできず、あたしはただ固まる。
そんなあたしに、真咲は角度を変えながら何度も何度も唇を押しつけた。

