「ココ」
「……な、なに?」
なんで怒ってるの?
っていうか、カナコは?
「あのさ……いっつも賢人のペースに乗せられて、流されすぎ」
「……お前なー。勝手なこと言うなよ。今のは、ココちゃんの方から」
「……賢人、少し黙って」
静かに、でもすごく低い声で言った真咲。
その迫力に負けて、大森は口をつぐんで黙りこくった。
なんか、怖いかも……今の真咲。
「賢人みたいなヤツと一緒にいて、楽しいのはわかる。でも、結局世界は変わらないよ。ココの抱えてるもの、何ひとつ軽くはならない」
「……は?」
なに、それ……?
なんでそんなことが真咲にわかるの?
あたしも大森も、今の台詞が理解できなくて真咲をにらみつけると、彼は自嘲気味にふっと鼻で笑った。
「……俺も、そうだったもん」
……俺も? それってどういう意味……?
「賢人ってさ、仕事場でもすげー眩しくて、周りの空気変える力あんだよね。だから、一緒に仕事した日は楽しくて、なんか自分までいい方に変わったんじゃないかと勘違いするんだけど……全然そんなことなくてさ」
むしろ、むなしさが増すって感じ。真咲はそう続けた。

