どのカップルの周りにも、もうお互いしか見えてないみたいな、濃密な空気が漂う。
そっか……ああいうのが、普通の恋人同士ってやつなのか。
だとしたら、あたしは大森にかなり色々我慢させてるんだろうな……
花火の夜に、キスもできないなんて、なんか申し訳ない……?
あたしがぐるぐると考えている間に、さすがに気まずくなったらしい大森は、あたしの手を引いてこの場所から出て行こうとした。
でも、あたしはそれに従わずに、ぐっと足に力を込めた。
「ココちゃん……?」
不思議そうに振り返った大森の後ろで、一発目の花火が上がった。
その光を受けてきらきら色を変える大森の髪がキレイだ。
……明るくて、お調子者で。でもこういうときにあたしを気遣う優しさもある。
まだ、好きかどうかはわからない。
でも、そろそろあたしからも、動かなきゃいけないような気がする……
「キス」
その二文字を口に出すと、二発目と三発目の花火が同時に上がった。
その音に後押しされるように、あたしは言った。
「しよっか。……今」
すると、きょとんとしていた大森の顔が、真面目なものに変わった。

