「少し先に、出店が見えてきたとこ……そうそう、あんず飴の……あ、見えた!」
カラコロと鳴っていた下駄の音が止まり、かけてる眼鏡のふちを押さえながら、遠くをじっと見つめたカナコ。
その表情がパッと明るくなったと思ったら、彼女は進行方向に向かって、ひらひらと手を振り始めた。
いったい誰に手を――――あ。
あの長身の二人組……まさか。
あたしの目がその姿をとらえるのと、カナコが二人のうち一人の名前を呼んだのは、ほぼ同時だった。
「真咲くーん」
近寄って挨拶を交わす三人から数メートル離れた場所で、あたしはぽかんと立ち尽くす。
……これ、どういうこと?
カナコの様子を見る限り、もともと約束してたみたいな感じだけど。
やがて三人があたしのもとまで歩いてきて、その中でカナコが一番に口を開いた。
「ココちゃん、黙っててゴメンね……?」
……ってことは。やっぱり、最初からこの四人で花火を見るつもりだったんだ。
なんで言ってくれなかったんだろ……
「ココちゃん、顔コワイって。せっかく浴衣似合ってんのに」
ふざけた調子でそう言うのは、髪にまた明るさが増して、ほぼ金髪の大森だ。
「俺、花火とか超久しぶりだし、カノジョと一緒っての実は初めてなんだ。だから、結構楽しみにしてたんだよね」

