「あの、今日はホントにごめんなさ――」
「あれ、ココちゃんじゃね?」
「ホントだ! ココちゃんだ!」
軽くあしらおうとしていたはずが、気が付けば、あたしたちの周りには野次馬が群がってきていて、結構なピンチに陥っていた。
みんな、あたしのこと意外に知ってるんだ……なんて、喜んでる場合じゃない!
「連れがいるので、そこ、通してください」
「ココちゃーん、サイン頂戴!」
「私は握手!」
……だーかーらー! みんな、この両手のかき氷見えないの!?
握手もサインもできるわけないって、見ればわかるでしょう!
そんなあたしの気持ちを察すことなく、遠慮なく群がってくる水着姿の若者たち。
どうしよ……なんか、こんなに集団で来られたら、ちょっと怖いっていうか……
自然と後ずさりをしていると、柔らかい砂に沈んだ足がもつれて、体のバランスが崩れる。
「きゃ――!」
こ、転ぶ……!
ぎゅっと目を閉じ痛みを覚悟したけれど、軽い音を立てて地面に叩きつけられたのは、二つのかき氷だけ。
うっすらと瞳をあけた先には、大好きな人の顔があって。
「……ココ、へーき?」
「心矢……」