「ずっと応援してます」
「ありがとうございます!」
「ココちゃんにひと目会うことができて、握手まで……俺もう死んでもいい……」
「だ、だめですよ! これからも、色んなあたしを見てくださいね」
「今日ココちゃんに会うために、写真集、三冊買いました!」
「うわぁ、ありがとうございます! 会えてよかった」
――短い時間の中でも、少しはファンの方と触れ合えたかなと思いながら、たくさんの人たちの手を握り続けて、残るはあと数人となった。
列の流れは一方通行のため、終わった人たちはすでに会場を出ていて、騒がしさも落ち着いている。
あと少しで終わっちゃうと思うと寂しいけど、今日のことは、これから仕事をやるうえで、すごくプラスになってくれそう。
そんなポジティブな気持ちを抱きながら、あたしはその残りの人たちとも順調に握手を終え、最後から二番目の人が目の前に来たときだった。
いつまで経ってもどうしてか手を出さないその人を不思議に思って、正面から顔を見つめた瞬間……
あたしの口が、無意識に動いていた。
「お、かー……さん?」
もう、十四年近く会っていなかったし。
彼女が写ってる写真も、簡単に取り出せない場所にしまってあったし。
記憶の中の顔だって、いつからかハッキリとは思い出せなくなってたけど。
……あたしには、わかった。
この人は、あたしのお母さんだ。
あたしの中の本能が、そうだと言っていた。

